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文芸部

2018.10.31

文芸部

2年生リレー小説スタート

みなさんこんにちは!高橋瑠狸子です。
本日10月31日から、毎週水曜日に文芸部2年生部員のみでリレー小説の連載が始まります!
トップバッターは私が務めさせていただきます。
それでは、2年部員でお送りする『絵空事』お楽しみください。

***************************************************

今は10月。体育祭や文化祭などの一大イベントも終わり、少し退屈を覚える時期である。ただそれは受験を控えていないものだけ。受験生である高校三年生にとって、本格的に受験を意識し勉強一筋になる時期だ。みんながみんな勉強一筋ならば、きっと清々しいのだけれど、喜ばしいことに推薦などで進路が確保された人間も出てきている。仕方がないのは重々承知だが、彼ら彼女らが放つポカポカ陽気を見ていると、腹の奥底から何かしらの負の感情がフツフツと込み上げてくる。この無駄な僻みは受験生である限り、避けられないことだと私は思っている。
そんなことを教室で自習しながら考えていると、胸ポケットに入れていたスマホがブルブルと振動した。
《伝えたいことがあるので、明日の16時に音楽室で待ってます》
何事かと思い見てみたら、こんな文が送られてきていた。
送り主は、高校に入学してから2年とちょっとの間を共にしていた同じ吹奏楽部のメンバー、中山楓汰からだった。彼は私の相棒のようなもので、現役時代は2人でユーフォニアムを担当し、”楓コンビ”として親しまれていた。”楓コンビ”の由来は、とてもとても雑なもので、私の名前が沙楓で彼の名前が楓汰だから楓というだけの安直なものである。まさかあの先輩のテキトーな発言で、3年間も言われ続けるなんて思いもしなかった。
そんな昔話を思い出しながら、私は彼のメッセージに対する返信を考えていた。
〈なんだか久しぶりだね!明日の16時に音楽室ね。了解した!〉
《話が早くて助かります!それじゃ、明日》
彼とのコミュニケーションは何時ぶりだろうか?現役だった頃は、週四で顔を合わせていたのに、最後の舞台である新入生歓迎会を終えると、彼とは話さなくなった。辛うじて、廊下などでたまに彼の顔を見たりはするが、以前のように他愛のないことを話したり、一つの曲について語り合ったりすることはない。そんな日々で、久しぶりに彼と話せるなんて、ワクワクしてきた。明日が待ち遠しくて、今日は勉強なんてやってられない。

◇◇◇

「ごめん!ちょっと先生の話が長くて遅れちゃった!!」
「遅れたって、たった三分ぐらい大丈夫だよ」
「それで、伝えたいことって?」
「あ、そうだったね…。今日伝えたかったことは、無事に専門受かったってことです!」
「え!!すごいじゃん!おめでとう!」
「ありがとう」
彼の夢は介護士になることで、そのことは入学する前から決めていたことらしく、現役時代も何度かその話を聞いていた。認知症だった彼のお祖父さんを手厚く介護してくれた人を忘れらず、自分もそうなりたいと思ったのがきっかけらしい。彼はどんな雰囲気だろうとその場を和らげてくれ、周りにいい影響を与えてくれる人であるから、彼に向いている職業だと私は思っている。
「それと、言うか言わないか迷ってたんだけど…なんか、さやちゃんの顔を見たら言いたくなってきった」
「何を?」
「僕、さやちゃんのこと好き!」
「え!?それって友達としてってこと?」
「違うよ!友達じゃなくて…女の子として。現役時代の時から思ってはいたんだけど、タイミングが見つからなくて…気づいたら受験始まってて、更に言えなくなっちゃって」
「…楓汰が私にプラスの感情を抱いてくれてることはとても嬉しいんだけど、私まだ受験終わってないよ?」
「わかってる。わかってるから、今日言おうか言わないか迷ったんだ」
「じゃあ、どうして言ったの?」
「わからないけど、さやちゃんの顔を見たら伝えなきゃって思って。今すぐ返事をよこせなんて言うつもりはないけど、いつかは返事を聞かせて欲しいな…!」

◇◇◇

あれから彼と別れた私は勉強に集中出来るわけなく、大人しく家に帰った。気持ちを落ち着かせるために湯船に浸かって、小一時間ぐらい経っている。
「沙楓いつまでお風呂に入ってるのー!そろそろ出ないと逆上せるでしょー!」
「はーい」
とりあえず返事はしてみたものの、まだ何も解決していない。今お風呂から上がったとしても、モヤモヤして勉強なんてところじゃないのは分かっている。だからと言って、逆上せて頭がフラフラするのも避けたいから、大人しく上がることにした。
お風呂から上がると、母はリビングの机で家計簿をつけていた。
「珍しく長風呂して、何かあったの?」
顔をこちらに向けることなく、母は私に尋ねてきた。
「別に何もないよ。ちょっと湯船で寝ちゃっただけ」
「そんなに睡眠不足なら、今日は早く寝なさい!」
「そうする。おやすみなさい」
自分の部屋に戻ってもまだ、彼のことを考えては答えの見えない沼の中へ沈んでいる。どうしてこんなに悩むのか…それは私も彼のことが好きだからだ。だったら彼と付き合えば済む話だと思う人もいるだろう。もし私が器用な子なら、そんなことも出来たのかもしれない。でも私は超がつく程の不器用人間で、とても恋愛と受験を両立できる自信がない。志望校に受からないのも辛いし、生半可な気持ちで楓汰を傷つけたくない。どちらも上手く行けばどんなに素晴らしいことか…。

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