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文芸部

2018.11.07

文芸部

2年生リレー小説『絵空事』第2回

あぁ…考えていたら朝になってしまった。
今日だって2つ小テストがあるのに一睡もできなかった。いつかは、って言ってたけど、それっていつまでなんだろう。
「沙楓ー!ご飯できたから早く降りてきなさーい!」
そんなことを悶々と考えるうちに母がご飯の準備をしてくれたみたいだ。
「はーい!すぐ行くー!」
母のいる階下に降りてご飯を食べだすと、母が
「目の下のクマすごいよ?勉強してても夜更かしはダメだからね?」
とひとことだけ、その後に洗面所に行って鏡を見たら、母の指摘通り鏡越しの私は疲労困憊で今にも立ち消えてしまいそうなほどだった。非情にもインターホンが鳴り、私にお出迎えが来たことをお知らせしてきてくれた。急いでバッグを確認し、軽快にドアを開けると、そこにいたのは親友の逢坂 花奏だった。私はいつも彼女と一緒に徒歩で登校しているのだが、彼女もまた、楓汰と同じで推薦が決まった組だ。
「久しぶりー!さや元気にしてた?」
「元気元気ー!おーちゃんおめでとー!推薦受かったんでしょ?」
「ありがとー!また一緒に登校できるよー!最近忙しくてさやと登校できてなかったからさや不足ー…またいっぱい話して学校行こうね!」
「うん!あ、それでさー昨日社会の先生の内田がさー…」

☆☆☆

いつも通りのバカ話にひさしぶりに華を咲かせていたら、いつの間にか学校まで来てしまっていた。花奏と別れて自分の教室に入っていくと、自然に昨日のことが思い出されてしまう。…だめだ。集中できない。
〈ごめん!緊急招集!楓汰のことで相談があるから!〉
《りょ!お姉さんが解決してあげちゃう!》
それからすぐに花奏がきて、昨日のことを説明すると、
「ふぅ〜!楓汰くんやるねー!そんな大胆だと思ってなかったよー!」
「もう…茶化さないでよ!今真剣に困ってるんだから!」
「でもさやは楓汰くんのこと好きなんでしょ?じゃあ答えは決まってるんじゃない?受験までは本腰入れて付き合う必要もないんだし…」
「そっか…ありがと!今すぐ決めるのは無理だけど少し落ち着いてきた!」
「んーん大丈夫!愛すべきさやのためだから!」
〈今日の16時に音楽室で言いたいことがあります!絶対来てね!〉
《わかった!またあとで》
ふぅ…今日の放課後だ。楓汰のためにも私のためにも頑張って伝えないと!

☆☆☆

それから、小テストをなんとか合格点ギリギリで乗り切って放課後すぐに音楽室に向かった。ドアを開けると、そこにはすでに楓汰の姿があった。
「楓汰早いね!」
「うん…さやちゃんが返事をくれるのかなって思ったらいてもたってもいられなくって。」
「そっか…うんわかったじゃあ単刀直入に言うね!私も楓汰のことが好き!付き合いたい!」
「付き合いたいってことはダメってこと?」
「そうじゃないの。お試しで付き合ってみない?」
「お試しって?」
「条件付きで付き合うの。例えば、手は繋がない。デートはしない。キ…キスとかもしない!そんな感じで条件付きでめんどくさいかもしれないけど、それでもいいなら喜んで私と付き合ってください!」
楓汰はにっこりと微笑んで、そのあとちょっとはにかみ笑いをして、
「ありがとう。こちらこそよろしくお願いします。」
それから、私たちの奇妙なカップル生活が始まった。
週末は図書館で勉強会、学校がある日は放課後に学校に残って勉強会、私と楓汰は常に一緒で、私たちのことをみんな認識していき、茶化したりされていたが、楓汰のなにか中性的な人柄か、すっと収まっていき私たちはとても良く平穏にカップル生活を過ごして行っていた。

☆☆☆

付き合い始めて1ヶ月と一週間。一生続けていくかに思われていたその生活は、思わぬ終わりを迎えようとしていた。私のテストの点数が著しく下がってしまっていたのだ。決して彼との勉強会が無駄だったとは思わない。しかし、好きな人と過ごす時間というのはそれだけで私たちを浮き足立たせ、私を勉強の苦痛から逃げさせるだけの効果があったというのは、前回に比べて平均で15点下がった私のテストを見れば一目瞭然だ。
彼と過ごす1ヶ月ほどの時間は、彼との時間を失うことを厭わせるには十分すぎるほどには十分な時間で、私の判断はありえないほどに鈍っている。自分でもわかっているのに、わかっているのにどうしようもない。その日の放課後に、彼は普段と同じように、笑顔で私といた。
「テストどうだった?」
私は無言でちょっとクシャクシャになったテスト用紙を渡した。
彼はうろたえていた。やはり彼は優しいんだ。今だって私を傷つけまいと必死に言葉を探してくれている。でもその優しさが私を甘えさせる。彼の優しさはまるでタバコのように私を依存させている。彼の優しさは私を侵していく。
「私ね、今回のテストで先生に志望校合格どころの話じゃないって言われちゃった。楓汰といると凄い楽しいし、落ち着くの。私は楓汰のことがすごい好きなんだなって自分でもわかる。でもね、もうどうしようもないぐらいに楓汰の優しさが私を侵食してるの。ねえ、やっぱりお試し、やめよっか。」
「え…」

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