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文芸部

2018.11.12

文芸部

1年生リレー小説 第2回

 一日目の奈良が終わって二日目の朝。僕たちは食堂で朝食をとり終えて旅館のロビーに班ごとに集まっていました。
 他の班がぞくぞくと出発していく中、悠太くんと片桐さんは今も喧嘩しています。
「なんであんな遅れたんだよ! これじゃあ少ししか回れないだろ!」
「はあ!? そんな遅れてないじゃない! あんたの目は節穴なの!?」
「じゃあ俺らが行きたい場所全部行けなかったら優香のせいだからな!」
「なんでそんなこと言うのよ!」
 この二人はいつも喧嘩していますが、すぐに仲直りするんです。仲直りというより忘れるっていう感じなんですけどね。喧嘩するほど仲がいいってこういうことですよね。
「悠太くん、そろそろ行かないと本当に遅れちゃいますよ」
「そうだな! じゃあ行くか!」
 こうして僕らの修学旅行が始まりました。

「おおー! ここが清水寺か! 景色いいなー」
 俺は清水の舞台から見えるジオラマみたいな京都の町並みを見た。空が青く澄んでいるから遠くの家もよく見える。
「ここいーなー。住みたいぜ」
 振り返ってみるとそこにはさくらがいた。陸と優香は少し遠いところでこそこそ何か話している。一体何してるんだか。
「いい景色だよね。さっき行った金閣寺とかも良かったけど私はこっちの方が好きだな」
「だよな! 俺はここに来る前、土産屋がたくさんあったからそこも好きだな」
「けっこう食べてたよね、八つ橋」
 さくらは口を手で隠して笑った。
「美味しかったぜ、ラムネ味。あとでさくらにもあげるよ」
「私じゃなくて優香ちゃんにもちゃんとあげてね?」
 なんでここで優香が出てくるのかさくらに聞こうとしたら、二人が帰ってきた。
「あっちに縁結びのスポットがあるんですけど行きません?」
 陸は清水寺の奥の方を指差した。
「いいよ、陸。それより早くしないと舞妓さんみられなくなる」
 俺がそう言うと陸もそうだが優香も少しがっかりしたような顔をした。
「そうと決まったら早く行こ! ね、さくら」
 優香とさくらは観光客の間をすり抜けて行ってしまった。
「僕らも行きましょ」
「おう」

 鴨川にはたくさんのカップルが等間隔に並んでた。俺は川の中に亀でもいるのかと思ってカップルの間から見える狭い川をのぞく。
「ちょっと悠太ぁ! 何してるのよ! さっさと行くわよ!」
 優香に呼ばれて俺は泣く泣く亀を諦めた。
「さっき何してたの? 首伸ばす亀の真似? あまりにも面白すぎて笑っちゃった」
 優香はさっきの俺の行動を思い出したのかお腹を抱えて笑い出す。
「あー。涙出てきちゃった」
「そんな笑う事ないだろ!」
「あんたは全然面白くないって思うかもしれないけど遠くから見てた私たちには爆笑ものなのよ?」
「陸もさくらも笑ってたのかよ。ったくひでーなー」
 俺たちは各自のお土産を買うために大きな通りを歩くことにした。
 俺は陸とさくらの後ろをとぼとぼ歩く。それは突然起こった。
「あのお店とかのポーチ可愛いよね? 優香ちゃ」
 さくらが振り返って俺の隣を見る。さくらはそのまま固まって動かない。
「ゆ、優香ちゃんがいない」
 今にも消えてしまいそうな小さな声でさくらが叫んだ。俺は隣を見る。俺の隣には誰もいなかった。ぽっかりと穴が空いている。俺たちはもうすぐこの大通りを抜けるところだった。いつ優香がいなくなったのか。
「優香……」
 俺は居ても立っても居られなくて走り出した。
「悠太くん!!」
 陸が叫んでる。
「さくらと陸はそこで待ってろ! 優香が来るかもしれないし! 俺は優香を探してくる!」

「行っちゃったね、山田くん」
「そうですね。ど、どうしましょう? 鹿野先生に連絡した方がいいですかね?」
 古木くんは旅のしおりを開いたり閉じたりして慌てふためいている。
「大丈夫だよ。きっと大丈夫。山田くんなら優香ちゃんを連れてきてくれる」
 古木くんは何か思い出したような顔をして私を見た。
「そ、そうですね。そうですよ。蒼井さんの言う通りです。悠太くんならきっと」
「きっと大丈夫」

 俺は優香を探して走る。ただの迷子だったらまだいいが、誘拐とか、不良とかに絡まれてたりなんかしたたら。夏の入道雲のようにもくもくと不安が湧き上がる。
 陸が説明してくれたけど忘れてしまった、このなんとか通りには右を見ても左を見ても土産屋ばっかりでどこに優香がいるかわからない。そして人が多すぎる。どこを見ても人、人、人でぶつからないようにするだけでも一苦労だ。
「ったく何してんだよ、優香。いつも怒っているくせにさ」
 しばらく走って苦しくなったので俺は電柱に寄りかかって息を整えた。周りの人たちが俺のことを見て心配そうな顔をする。ふと顔をあげると目の前に面白Tシャツ屋があった。俺は迷わずそこに入った。しばらく店内を探してみるとそこに優香の姿を見つけた。
「あれ? 悠太? どうしたの? そんな息切らして」
「おま! なんでいなくなんだよ! 急に!」
「えっ」
 優香は辺りを見渡す。
「うそ。なんでみんないないの?」
 俺は力が抜けてしまって床に座り込んだ。「事件とかに巻き込まれてなくてホントよかった」
「私はこのTシャツ妹のお土産にしようと思って」
 優香はアイラブ京都と書いてあるTシャツをドヤ顔で見せつける。
「なんだそれ! センスねー」
 俺は思わず笑ってしまう。
「なによ! そんなことないでしょ?」
「そのTシャツはやめとけ。もっと可愛い小物とかが絶対いいから」
「そ、そう? あれ? 待って、あんたじゃあ私のこと探しにきたの?」
「あ? そうだけど?」
「うそ……」
「てか、前もこんなことあったよなー。小学生の頃の林間学校。あの時も優香、迷子になって変なTシャツ屋にいて、俺が探したっけ」
 思い出したら笑えてきた。
「そんなことあったっけ?」
「あったって」
 俺は優香を連れてTシャツ屋を出た。
「まあ、見つかって良かった」
「なんか迷惑かけたみたいでごめん」
 優香はぺこりと頭を下げる。
「いーよ、俺は。慣れっこだし。でも陸とさくらにはちゃんと謝れよ」
「わかってるわよ。てかなによ、慣れっこって!」
「お前のそういうすぐ噛み付くところとか少し抜けてるとことか。でも大丈夫だ。いつでも俺が見つけてやるからよ」
 優香の顔が少し赤くなる。
「ん? どうした?」
「なんでもないわよ! でも……ありがと」
「おう。さっさと帰るのぞ」
 俺は少し照れくさくてポケットに手を入れて歩き出した。

「あっ! 帰ってきた! 優香ちゃん! 山田くん!」
 さくらが手を振って私と悠太を迎えてくれた。
「おー。ごめんな。結構手間取っちまった」
「みんな、ほんとにごめんなさい! 私勝手なことしちゃった! 本当にごめん!」
 私は頭を下げる。
「全然いいよ。優香ちゃんが無事ならそれで」
「そうですよ。あと、必ず悠太くんが見つけてくれるって信じてましたし」
「だってよ、優香」
「みんな本当ありがとう」
 私は一緒に行動している班のメンバーが悠太とさくらと陸くんで本当に良かったと思った。

「俺のそば離れるなよ。すぐ迷子になるんだからよ」
「なによ」
 陸とさくらの後ろを俺と優香が歩く。さっきのぽっかりとした穴はもう空いていない。
「また明日も自由行動はあるんだ。サイコーの修学旅行にしよーぜ。優香もそう思うだろ?」
「あったりまえじゃない! 忘れられない世界で一番のものにしてみせる!」
 少し赤くなってきた空を飛行機が横切る。飛行機雲が綺麗なラインを引いてすぐ消えていった。

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