文芸部

リレー小説はじめました

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こんにちは。火猫農民です。
以前から告知していた通り、部員8名で一つの物語をつくります。
トップバッターはお察しの通り、火猫農民が務めます。
今回は最初と最後の一文が決められているだけなので、かなり好き勝手にやらせて頂きました。
どのような結末を迎えるのか、最後の一文も予想しながらお楽しみください。

 

 

「やあ、また会ったね」

無とも永遠とも言える眠りから覚めると、そこには若い男の顔があった。邪魔です、とわたしが言おうとしたのを遮って、彼は喋り始めた。

「ボクの名前は…あぁいや、覚えなくていいや。そうだな、パパとでも呼んでくれ」
「えっ嫌です」
「そんなすぐに断らないでよ、ボクが変質者みたいになるじゃないか」

変質者なのは事実だから仕方ない。とはいえ、至近距離のまましょんぼりする彼があまりにも邪魔…じゃなくて哀れだったので、わたしは妥協することにした。

「しょうがないですね、お金くれたらパパって呼んであげます」
「知らないかもしれないけど、お金をそういうことの対価にするのはあんまりよろしくなくて…」
「知っていますよ。パパk」
「ストップストップストップ!なんでそんな言葉知ってるのかな!?」
「貴方が昨夜インストールしたんですよ」
「酒なんて飲むからぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

わたしの持つ知識は、すべてパパによってインストールされたものだ。わたしが何か良くないことを言った場合、それはパパの過失である。わたしは何も悪くない。
そんなことより、パパが床に崩れ落ちたおかげで、ようやくわたしは起き上がれるようになった。

「……随分と、寂しい部屋ですね」

周りをくるりと見回す。わたしが座っているベッドの他にあるのは、真っ白な壁と床と、四角い穴と、ついでに情けないパパだけ。しばらく部屋を眺めていると、不意にパパが立ち上がった。

「気を取り直して、ちょっと確認をしよう」

少しだけパパの顔が真面目になって、わたしもなんとなく緊張してしまう。

「キミはボクたちの作り上げたアンドロイド、daughter-57。ボクたちにとって57回目の娘にして最高傑作だ。その認識は間違っていないかい?」
「はい。終わってるネーミングセンス以外は間違っていません。名前ください」
「…その様子なら大丈夫そうだね」
「微笑んでも無駄です、ちゃんとした名前が欲しいです」
「じゃあ、歩行テストも兼ねてママの所に行こうか」

聞く耳を持たない。わたしは溜息を吐きながら、パパに続いて四角い穴をくぐった。暗い通路を抜けると、また同じような四角い穴。…なんとなく、嫌な予感がする。

「……ああ、これがパパとママの愛の巣ですか」
「言い方…」

その部屋は、散らかった紙のせいで真っ白に見えた。