文芸部

リレー小説④

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どうもこんにちは。
文芸部で一番名前が読みにくい、餘亰涓です。
締切またしてもギリギリですが、読んでやってください。

 

◆◆◆


あの出来事以来、パパと私の間に確かな溝が生まれた。
ハッキリと言葉で表すには、どうも語彙が足りない。それでも、明らかに溝が存在するようになった。ちなみにママとの間には特にない。


(ヒトはこういうのをなんというんだったか、これが反抗期というものなのだろうか?)


インストールされているヒトの生態に、パパとの溝、などという項目はない。これは何故?あの資料に関して知っていることはない。
ないないない………思えば私は私についてなぁんにも知らない。


(アイ……パパとママの最高傑作で57番目の娘…………)

 


57番目?

 


今までこんなことには目を向けなかった。いや、向けられないようにされていたのか。定かではないが、なぜこのことに気が付かなかったのだろう。


(私が57番目なら、前にいるはずの56体は……)


どこにいるのだろうか。他の場所にでも行っているのか、あるいはメンテナンス中なのか………


ヒントはあの資料と、パパの反応。


あんなに必死に隠すような資料だ。何かあるはず。
そう思った私の行動は早かった。それはなんの捻りもないからなのかもしれないが、確実だ。あのちらかっている部屋に、資料があるであろう部屋に、自ら赴けばいいのだ。


急いでその部屋に向かう途中、微かに焦げ臭い匂いがした。
その時は、なぜだか無性に気になって、その匂いがする扉の前で立ち止まった。


ママが料理に失敗した?
ーーー否。ママの料理は完璧です。
じゃあ、実験に失敗した?
ーーー否。実験室は遥か後方にあります。
それじゃあ、この匂いは、この臭いは、なんなの?
ーーー状況に合致するデータが存在しません。


こんな時は単純に扉をひらけばいいのではないか。
でも、私はこの扉の先がとても怖いものに思えた。
知らなければ、生きていける。
知れば、後には引けない。


究極の二択だ。
それでも私は、

 

自分の好奇心に勝てなかった。


◆◆◆


それを、今になって、後悔している。
目の前に、広がる、火の海の、中の、様々な、人形。
否、人形、だった、もの。
思えば、おかしかったのだ。
いくら、AIだとはいえ、こんなに、考えることなど、ない。
AIに、感情など、あるはずが、ない。
いいや、


あっては、いけない。いけない、のに。

 

 

手元にある一部焼けた資料が、全てを語っている。


◆◆◆


daughter-57
本人の希望により、個体名:アイ

性別:女型
身長:157cm

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機密事項
AIへの感情付与。
国の法律に違反するため、扱いは慎重に。