文芸部

リレー小説⑥

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荒木ツヅルです。リレー小説の続きを書きました。良かったらお読みください。

───────人工灯の眩しさに思わず目を覆った。
人間は『デジャヴ』という、自分の身に起きていないことを既に体験してしまったかのような錯覚に陥る現象を体験できる生き物らしい。きっと私もそうなのだろう。
私は繰り返し『夢』を見る。現実か、あるいは別の何かとの境目が曖昧な夢。けれど夢にしては鮮明すぎるし、現実にしてはおかしなところが多すぎる。私はまだ二十年少ししか生きていないし、不思議だった。
この鮮烈な夢は、たぶん十三歳の時からだと思う。最初はただの悪夢かと思っていた。でも、毎日とはいかなくても結構な頻度でその夢を見た私は、どこか懐かしさを覚えた。奇妙かもしれないけど、自分に優しく触れるような、そのぬるい懐かしさが心地良かった。どこか遠くの潜在意識を刺激するような、むかし身に染みた幸せを思い起こすような、決して悪いものではなかった。問題なのはその夢の内容で、別軸が同時に存在してしまっていた。何体ものアンドロイドを創り上げて完成を求め『失敗作』を作り続けた狂科学者と、狂科学者が燃やしたアンドロイドたちの残骸だ。私は、無機物に愛着が湧きアンドロイドから貰えるはずの愛を求めることが馬鹿馬鹿しいと思う。それは人間を愛せないことを棚に上げているに相違ない。まあ、私は当事者ではないのでこれ以上この夢に触れない方がいいのは確かかもしれない。
「おい、いつまでそこでのろのろ座ってんだ? 早く立ち上がって働けや」
頭上から声がした。ここの現場の管理人である年寄りだ。無能のくせに、口だけは立派だった。それよりもここから早くいなくなって方が身のためだと思うけれど。
「……すみません。寝起きのため朦朧としていました。直ちに赴きます」
思っていたより感情のない声を出してしまった。手を動かして支度しながら、頭を現実から切り離して再びさっきのことを考える。少なくとも半世紀前の夢であることは確かなんだが、拘束の身なので同じように収容されている人間と情報を交換しても、他の人間ほどは入らない。私は右掌に刻まれた鉄製の刻印を撫でた。